急性腰痛症(ぎっくり腰)

重い物を持ち上げる動作や体をひねる動作などをきっかけに、腰に急激な痛みが生じる状態です。医学的には、肋骨の下からお尻の下あたりまでの痛みが6週間未満続くものを指し、その約9割は画像検査で特定の異常が見つからない「非特異的腰痛」です。多くの方が自然に軽快し、およそ7割の方が1年以内に回復するとされています。

急性腰痛症(ぎっくり腰)が起こる場所
急性腰痛症(ぎっくり腰)が起こる場所

原因

重い物の持ち上げ、中腰姿勢、急な体幹のひねりなどにより、腰部の筋肉・靭帯・椎間関節に急激な負荷がかかることで発症します。

明らかなきっかけがなく、くしゃみや前かがみといった些細な動作で起こることもあります。多くは椎間板や神経そのものに重い異常があるわけではありません。

症状

腰に急激な痛みが走り、その場で動けなくなることがあります。

前かがみや体をひねる動作で痛みが強くなり、じっとしていると比較的楽になります。

多くは数日〜数週間かけて徐々に軽快していきますが、いったん大きく良くなったあとも、1年ほど経った時点で軽い痛みや動きにくさが残る方も一定数いることが分かっています。長引きそうな場合は早めにご相談ください。

検査

問診と診察で、がんにかかったことがある、思わぬ外傷があった、発熱がある、原因のわからない体重減少がある、ステロイド薬を長く使っている、免疫力が低下する病気があるなど、注意すべきサインがないかをまず確認します。

こうした注意すべきサインがなければ、レントゲンやMRIなどの画像検査は通常必要ありません。多くの腰痛は画像に写らない筋肉・靭帯のトラブルによるものだからです。

下肢のしびれなど神経の症状が疑われる場合は、脚を持ち上げて痛みやしびれが出るかを確認する検査や、筋力・感覚の診察を行います。それでも神経の圧迫が疑われる場合はMRIで詳しく調べます。

治療

多くの場合、安静にしすぎず痛みの範囲内で普段通りの生活動作を続けることが回復への近道です。腰痛の多くは自然に軽快していく良性の経過をたどるとまず知っておくことが大切です。

薬に頼らない方法として、痛む部分を1回20分程度温める温熱療法、マッサージ、鍼治療、整体的な手技(脊椎マニピュレーション)なども選択肢になります。

痛みが強い場合は、消炎鎮痛薬(イブプロフェンやナプロキセンなどのNSAIDs)を必要最小限の量・期間で使用したり、筋肉の緊張をやわらげる薬(筋弛緩薬)を併用することがあります。市販の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)は腰痛への効果が乏しいとの報告があります。また、高齢の方や腎臓の機能が低下している方は消炎鎮痛薬の使用に注意が必要です。

痛みが強い時期はコルセットで一時的に腰部をサポートすることもあります。多くは1〜4週間程度で改善します。

リハビリ

痛みが落ち着いてきたら、腹筋・背筋など体幹深部筋を鍛えるストレッチや軽い運動療法を段階的に始めます。運動療法は痛みが出たばかりの時期そのものへの効果ははっきりしませんが、痛みが長引きやすい方には早めに取り入れることを検討します。

再発予防のために、日常生活での姿勢や物の持ち上げ方の指導を行います。

重い物を持ち上げるときの姿勢(悪い例・よい例)
重い物を持ち上げるときの正しい姿勢

自宅で手軽にできる体操として「これだけ体操」もおすすめです。前かがみの姿勢が続くと腰への負担が少しずつたまっていくため(いわば「腰の負担の借金」)、これを1日に数回リセットする体操です。①足を肩幅より少し広めに開いて立ち、両手を骨盤のすぐ上あたりにできるだけ近づけて当てます。②膝を伸ばしたまま、つま先側に体重をかけながら、両手で骨盤を前に押し出すように腰をゆっくり反らせます。③「痛気持ちいい」と感じるところまで反らし、その姿勢で3秒間キープします。④ゆっくり元の姿勢に戻します。これを1セットとして、前かがみの作業の合間など1日に数回行います。膝を曲げない、あごを上げすぎないことがポイントで、続けることで腰痛の改善につながると報告されています。

これだけ体操のやり方
これだけ体操(松平浩考案)のやり方

これだけ体操2020(テロップ付き・松平浩先生考案)

受診の目安(このような場合はすぐに受診してください)

  • 手足に急に強い麻痺が出た
  • 排尿や排便がしにくい、失禁する
  • 発熱を伴う強い痛みがある
  • 安静にしていても激しい痛みが続く
  • 体重をかけられないほどの痛みがある
  • がんにかかったことがある
  • 転倒や事故など、思い当たる外傷がある
  • 原因のわからない体重減少がある
  • ステロイド薬を長期間使用している
  • 免疫力が低下する病気がある、その治療を受けている

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療を保証するものではありません。症状が続く場合や心配な場合は、医療機関を受診してください。

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