腰椎椎間板ヘルニア

腰から脚にかけての痛み・しびれ(坐骨神経痛)

腰椎椎間板ヘルニアは、坐骨神経痛(お尻から脚にかけての痛み)の主な原因のひとつです。背骨のクッションである椎間板の中心の柔らかい部分(髄核)が外側の膜を破って飛び出し、近くを通る神経根を圧迫することで起こります。多くの方は手術をせずに回復し、約87%の方が3か月以内に症状が軽くなるとされています。「椎間板が破裂した」といった不安になりやすい表現もありますが、実際には多くが自然に良くなっていく経過をたどりますので、過度に心配しすぎないことも大切です。

原因

背骨の中でも特に負担のかかりやすい下から2番目・一番下の椎間板(L4-L5、L5-S1)で最も多く起こります。40〜60歳代に多くみられます。

重い物を持ち上げる動作や体をひねる動作がきっかけになることがありますが、明らかなきっかけがなく起こることもあります。

腰椎椎間板ヘルニアで起きていること
正常な椎間板と、ヘルニアで神経が圧迫される様子

症状

  • 腰痛とあわせて、お尻から脚にかけての痛みやしびれ(坐骨神経痛)が出ます
  • 脚にしびれ、力の入りにくさ、感覚の変化が出ることがあります
  • 脚を伸ばしたまま持ち上げると、痛みやしびれが強くなることがあります
  • 前かがみの姿勢で悪化しやすい傾向があります
坐骨神経痛が広がる範囲
腰からお尻・脚にかけて痛みやしびれが広がります

検査

まずは詳しい問診と診察で状態を確認します。

レントゲンやMRIなどの画像検査は、重い麻痺がない場合、4〜6週間ほど保存的治療を行っても症状が続くとき、または注射や手術を検討するときに行います。MRIは診断を確定し、手術が必要かどうかを判断するうえで最も役立つ検査です。

治療

重い神経の障害がなければ、まず6週間ほどを目安に、安静にしすぎず普段通り立ったり歩いたりしながら、消炎鎮痛薬(NSAIDs)、運動を中心としたリハビリ、徒手療法などを組み合わせて経過をみます。この保存的治療で90〜95%の方が良好な経過をたどるとされています。

坐骨神経痛が強く続く場合は、硬膜外ステロイド注射も選択肢になります。2週間ほどで痛みや動きの改善がみられることがありますが、長期的な効果や手術を避けられる保証があるわけではなく、まれに合併症の報告もあります。

手術は、重い麻痺が進行している場合、排尿・排便のコントロールが難しい場合(馬尾症候群)、6週間以上たっても症状・診察・画像所見が一致して痛みが続く場合に検討します。手術は坐骨神経痛の改善が早いという利点がありますが、1年後の経過は保存的治療とあまり変わらないともいわれています。手術は後からでも選択できますので、あわてず医師とよく相談しながら決めることが大切です。

リハビリ

  • 急性期でも安静にしすぎず、痛みの範囲内で普段の生活動作を続けます
  • 痛みが落ち着いてきたら、体幹(腹筋・背筋)や股関節まわりの機能を改善する運動療法を段階的に行います
  • 前かがみの姿勢を長く続けない、重い物を持つときは膝を曲げて腰への負担を減らすなど、日常生活の工夫も再発予防に役立ちます

やってよいこと

  • 痛みの範囲内で、立ったり歩いたりする普段の生活をできるだけ続けます
  • 座っているのが楽になってきたら回復のサインです。その段階から体幹や股関節まわりを鍛える運動を少しずつ強めていきましょう
  • ウォーキングなどの有酸素運動は、痛みが強い時期からでも無理のない範囲で始めることが勧められています
  • 人にやってもらう治療だけに頼らず、自分で体を動かすリハビリを中心にすると回復に役立ちます
  • 温める、痛みに応じたストレッチ

さけたいこと

  • 長期間の安静・寝たきり:安静にしていても回復が早まるわけではなく、かえって体力や筋力が落ち、回復が遅れることが分かっています
  • 「椎間板が破裂した」など不安をあおる言葉に振り回されないこと:実際にみられる「突出した椎間板」の多くは、時間とともに自然に軽快していきます
  • 症状が出てすぐに画像検査(MRIなど)を急ぐこと:多くの場合、まずは4〜6週間ほど保存的治療を行い、それでも改善しないときに検討します
  • 痛み止め(医療用麻薬などの強い薬)を長期間使い続けること:長く使うことの効果を示す十分な根拠はなく、副作用のリスクも指摘されています
  • 膝を伸ばしたまま重い物を持ち上げる動作、不自然な姿勢や同じ姿勢を長時間続けること

ただし、痛みが少し強まったからといって、それがすぐに体を痛めているサインというわけではありません。症状を大きく悪化させない範囲で体を動かし続けることが、使わないことによる体力の衰えを防ぎ、回復を後押しします。

なお、手術を受けた方がスポーツに復帰する時期に明確な基準はありませんが、高い負荷がかかる運動への復帰は術後3か月ほどを目安にすることが多く、ウェイトリフティングやラグビー、乗馬、格闘技などは長期的に控えるよう勧める医師もいます。再開の時期は担当医とよく相談してください。

受診の目安(このような場合はすぐに受診してください)

  • 足に力が入らない、力が抜けていく感じがある
  • お尻や陰部のあたりの感覚がおかしい・しびれている
  • 排尿や排便が自分でコントロールしにくい
  • 発熱を伴う
  • がんの既往がある、原因不明の体重減少がある
  • 歩行が急に難しくなった

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療を保証するものではありません。症状が続く場合や心配な場合は、医療機関を受診してください。

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